私たちの宇宙は、どこから来て、何でできているのでしょうか?
そして、なぜ私たちはここにいるのでしょうか?
物理学者 Tabuchi Kosakuが提唱する新しい統一理論**「iSSB-String理論」**は、これらの壮大な問いに、驚くほどシンプルで美しい答えを提示します。
現代物理学の「迷子」
話の始まりは、現代物理学が直面しているいくつかの大きな謎です。
- 引き裂かれた地図: アインシュタインの「一般相対性理論」と、ミクロの世界を探る「量子論」。この2つの偉大な理論は、宇宙を説明するための別々の地図のようなもので、ブラックホールの中など、本当に知りたい場所では食い違ってしまいます。
- 見えない大陸: 宇宙に存在する物質やエネルギーのうち、私たちが知っているものは、わずか5%。残りの95%を占める「ダークマター」と「ダークエネルギー」は、正体不明のままです。
これまでの物理学は、これらの謎を解くために、新しい粒子や複雑な仮説を付け足してきました。しかし、iSSB-String理論は全く逆の発想をします。「足し算」ではなく、究極の「引き算」から始めるのです。
アイデアの核心:「すべて」は、ただ一つのものから
iSSB-String理論の出発点は、たった一つの宣言です。
「この宇宙の時空も物質も、すべては《Δ場》という、ただ一つの実体からできている」
それはまるで、無限に広がる静かな水面のようなものです。この「Δ場」という根源的な海が、どのようにして波立ち、渦を巻き、泡(粒子)を生み出し、私たちが知る宇宙を形作っていくのか。その物語を解き明かす鍵が、次に示す**「たった2つのルール(公理)」**です。
宇宙を支配する、たった2つのルール
この理論では、宇宙は、観測や実験の前に存在する、2つの単純で強力なルールに従っていると考えます。
ルール1:変化は「さざ波」のように光速で伝わる
Δ場に起きた変化は、必ず光の速さで、さざ波のように周りへ伝わっていきます。この「さざ波の伝播」こそが「時間」の流れの本質であり、波が作る凹凸が「空間」の構造となります。
ルール2:生まれる形は「安定」していなければならない
Δ場は、トポロジー的に安定な(簡単にはほどけない)「結び目」のような構造しか、安定して存在することを許しません。この安定した結び目こそが、電子やクォークといった「物質粒子」の正体です。
たったこれだけです。この2つのルールから、物理学のすべてが必然的に導かれる、というのがiSSB-String理論の核心的な主張です。
2つのルールから生まれる、驚きの世界
このシンプルな出発点から、私たちの宇宙の驚くべき姿が明らかになります。
- 物質の多様性は「結び方の違い」電子やクォークなど、様々な種類の素粒子がありますが、それらは全てΔ場の「結び方のバリエーション」に過ぎません。粒子の重さや電気的な性質は、結び目の形や向きから、必然的に決まるのです。
- 4つの力は「結び目どうしの作法」自然界の4つの力(重力・電磁気力など)は、別々の法則ではありません。粒子(結び目)どうしが出会ったとき、ルール2(トポロジー保存則)を守りながら形を組み替えるための、統一された「作法」なのです。
- ダークマターの正体は「なりかけの物質」iSSB-String理論では、ダークマターは未知の粒子である必要はありません。それは、宇宙の始まりの時、Δ場の密度が少し足りなかったために安定な「結び目」にはなれなかったものの、エネルギーの塊として宇宙空間に「化石」のように残った領域なのです。
- ダークエネルギーの正体は「宇宙自身の生成活動」宇宙の膨張を加速させているとされるダークエネルギーもまた、特別なエネルギーではありません。それは、ルール1に従って「秩序のさざ波」が今もなお、宇宙の果てで未開のΔ場を開拓し続けている、宇宙自身の「生成活動そのもの」なのです。
物語から「検証できる科学」へ
iSSB-String理論は、ただ美しいだけの物語ではありません。この理論から導かれる予測は、実際の観測データや精密な実験結果と照らし合わせることができます。
実際に、この理論は宇宙に広がる銀河の分布を驚くほど正確に再現してみせました。さらに、超弦理論の最大の難問であった「なぜ、この物理法則なのか?」という問いに対しても、「宇宙全体が自己無矛盾であるためには、この法則しかありえなかった」という、唯一の答えを導き出すことに成功しています。
結論:私たちは「生成する宇宙」の一部である
iSSB-String理論が描く宇宙観に立てば、私たちは、完成した舞台を眺める観客ではありません。
宇宙は、自らが定めた内なるルールに従って、今この瞬間も新しい時空を生成し、枝を伸ばし、花を咲かせている、巨大な生命体のようなものです。そして、私たち人間やその知性は、その宇宙が自分自身を知るために咲かせた、美しい花の一つなのかもしれません。
この理論は、物理学の探求の終わりではなく、私たちと宇宙との関係を、より深く問い直すための、新しい「地図」の始まりなのです。
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